恋でも始めてみましょうか 後
姿見というのは検索をかければいくらでも出てくるがサイズはほぼ固定されている。室内にあっても邪魔にならなくて、なおかつ全身をきちんとみれるとなったら縦長のものが大半になるし、簡単に倒れてはいけないがかと言って重すぎて別室に持ち運べないようなものでもいけない。そうなるとどうにも見かけからしてチープなものが市場のほとんどを占めてしまう。
いっそ壁を工事して鏡を取り付けてしまおうかと考えていたときにふとアンティーク家具を専門に売っている店で見つけたのが今寝室にある鏡だ。たぶん貧相な腕をしている帝人君だったら簡単には動かせないだろうけど、そこそこ鍛えている俺だったら動かすくらいだったら可能な重量のそれはわりとシンプルな内装の部屋で異彩をはなっていた。届いたその日に業者に設置してもらったが、ちょっと見た目重視で選びすぎたかもしれない。でもこれだけ存在感があれば嫌でも目に入るし、この部屋に入った瞬間ぎょっとする帝人君の顔が見れるかもしれないよね。何ですかこの鏡、って絶対聞くだろうからそこからじわじわと俺の良いように話を進めてやればいい。
そんな策略を巡らせながらいつものように電話一つで帝人君を呼んだ。ソファに並んで座って他愛ない話をして、少し熱のこもったような目で見てやれば簡単に頬を赤らめるあの子を寝室に呼ぶのなんて簡単な話だ。そう簡単な話だったんだ。
それなのに今日の帝人君はやけに饒舌だった。どうやら先日園原杏里と二人で出かけることがあったらしい。
というのも、最近公開された新しい映画の話を振ったせいなんだけどね。別に一緒に見に行こうとかそういうのは特に考えてなく単に会話の流れの一環として出した話だ。それにすでに見に行ってきたというから、誰と? とありきたりな返答をしたときの応えがこうだった。
「……園原さんと、です」
あ、別に違いますよ、デートとかじゃなくて映画のチケットを僕にくれたのは園原さんの友人で、そのときに園原さんも誘って行きなよって言われたからで、と慌てたような弁解を聞いてもいないのにしてくれた。
「ふうん、そうなんだ?」
この子が園原杏里を好いていることはよく知っている。たぶん誰が見てもわかるだろう。それなら何で俺とあれやこれやしてるのかと聞かれたら、そんなの帝人君に聞けば? としか言いようがない。でもまぁ、この子が異性を押し倒してるところなんてまったく俺には想像できないけど。それくらいこの子って受動的に見えるんだよね、見かけだけは。実際の中身は変なところで剛胆で、本質は冷静な子だ。自分の望みをかなえるための強かさは表に出ていないからこそおもしろいと俺は思っている。
「楽しかった?」
ありきたりな青春を謳歌している彼に模範的な年上らしい質問をしてやる。極々一般的な流れの上で、俺の頭の中にはすでにいくつかのシナリオはできあがっていた。この子がこう応えたらこう返してやろうと先を考えながら話すのは俺の癖みたいなものだし、想像通りの答えが返ってくると人間に対する愛しさも増すというものだ。
さて帝人君はどんな風に応えるんだろうか。第一候補としては、まぁ、一応俺とあんなことをしているんだからデートに行ったことに(本人は否定してるけどそれってデートと表してもおかしくない)ちょっとくらい気まずい顔をしつつ、でも俺の負担にならないような言葉を選ぼうとするかなぁ。あとはよくあるパターンだけど、このデートの話が実はブラフで、少しくらいは嫉妬してくれないのかって反応かな。もしそんなことしたら爆笑しそうだからやめてほしい。悋気ってさぁ、お互い同じくらいの温度で思ってないと起こらないんだよね。
多種多様な会話パターンを考えていたが帝人君が浮かべた表情はそれのどれにも該当しなかった。
そっと目を伏せ、頬を染めて、映画おもしろかったですよと細い声で呟いたそれにすぅっと何かが冷め、気づいたら口から言葉が出ていた。
「へえ、そう。帝人君は彼女のことが好きだもんね」
「え、いえ、その……それは、嫌いじゃないです、けど……」
きゅ、と唇を引き結んで、園原さんはそういうんじゃないですよ、と呟きながら赤くなってるその姿は一般的な男子高校生が好きな子を当てられたときにする仕草にしてはすれてなさすぎじゃない? とは思った。
人差し指の先でソファを叩く。つまりこの子は日常では園原杏里を、非日常というフィールドでは俺へと恋情を募らせて使い分けているんだろう。いやはや、想像以上に器用なことをしてる。無意識かもしれないけどさ。
帝人君ってもっと恋愛ごとには疎いと思ってたよ。でもそれって一般的には二兎を追う者は一兎も得ずになると思うんだよね。ていうか、俺を誰かを見ながら捕まえられるくらい簡単な人間だと思っているんだとしたらそれって。
「たいした根性だよね」
「……え?」
俺が呟いた言葉に帝人君は不思議そうな顔をして見せた。
この子はちゃんと俺をわかってるんじゃないかと思ってたんだけど見込み違いだったらしい。……いや、逆か。
もしこの子のこれが想いを返さない俺への意趣返しのつもりなんだとしたら、うまいものだ。なるほど、俺は自分で考えていたよりもこの子にとって俺の占める割合は大きいと考えていたみたいだ。
実際そうでないことは今判明したわけだけど、どうしたものかな。じわじわと苛立ちがこみ上げてくる。まったくもってこの子は俺の予想外のことを簡単にしてみせてくれるよね、と思いながらも笑みを作り口を開いた。
「告白しないの?」
「え、なんでですか?」
心底不思議そうに首を傾げる姿はなかなか芸達者だ。本気でそう思ってるような気がしてくる。
「だってその子のことが好きなんだろ? 好きならちゃんと言わないといつの間にかいなくなっちゃうかもしれないよ?」
ずっと一緒にいてくれる保証なんかないんだから、と言外に込めた意味をこの子は正確に受け取ったらしい。呆けたように口をあけて、あ、と呟いてからは消沈したように顔を俯けた。
「そう、ですよね……」
口元に手をやり、眉間に皺を寄せて考えているのは今話した園原杏里のことか、それとも姿を消した幼なじみにことかなんてわからないけど(どうでもいいし)何事かを言おうとして顔を上げた帝人君に特上の笑みを浮かべながら、彼が口を開くより先に声を出した。
「でもさ、気をつけたほうがいいよ。帝人君セックスしてるときの顔、相当ひどいから」
女の子ってそういうのシビアだから付き合うならまずそれ直さないといけないよね、と世間話の一つでもあるかのように告げたそれはこの場で言うつもりはなかった。帝人君があんな態度とらなかったら寝室でもうちょっと優しい言い方をして教えてやったのに。そもそも女の子相手にするなら受け身なわけじゃないから、もしかしたらあんな死にそうな顔しないのかもしれないけどさ。
まぁたぶん、この子の性格なら馬鹿にされたととって怒るだろうな、もしかしたらもう二度としないと言うかもしれない。それならそれでいい。というよりも、もうそれで全部終わらせてしまおうか。
そう考えていた俺の目の前で帝人君は表情を一転させた。
「……え」
思わず声が出ていた。いろいろやっているおかげで人間の表情はさまざまなものを見てる。特に怒ってる顔なんていくらでも脳裏に出てくるくらいだ。
だから一瞬、怒るはずのこの目の前の相手が浮かべた顔の意味がわからなかった。
血の気が引くって言葉がある。恐怖心から青ざめるときに使うときの言葉だけど今この子が浮かべている表情に適した言葉はそれだった。
本当についさっきまで耳まで赤くなって、照れながら会話していた人間と同じなのかというくらい顔面蒼白だ。一週間後に世界が終わるって言われたら人間こんな顔をするかもしれない。今度試してみよう。いやそうじゃなくて。
「……帝人君?」
思わず眉間に皺を寄せて名前を呼んだのと同時くらいに携帯電話の電子音が鳴り響いた。それにビクリと目の前の身体が震える。
一瞬無視しようかと思ったが液晶に浮かんだ名前に舌打ちをしながら通話ボタンを押して愛想のいい声をあげた。
「あ、どうも。折原です」
どうされましたか、といつもいろいろと世話になっている粟楠会の幹部に電話越しに尋ねる。四木さんからの電話って無視すると後々面倒になるんだよね。
電話の内容は至って平凡なものだった。いやこの街を仕切っている人間のやることが平凡と言っていいのかわからないけど、俺とこの人がする会話としてはいつもの通りだ。
ええ、はい、その件についてはと頭の中の情報を言わなくてもいいことは省きながら口にしているとふらりと隣に座っていた帝人君が立った。
どこに行く気だと目線だけで追う俺には目もくれず、ソファの足下に置いていた鞄を手に取ると騒音をたてないようにそっとリビングのドアへと向かった。
「はい……それについてはまだ見当がつかなくて」
すみません、なんて殊勝なふりをしながらも俺の意識は帝人君に向いていた。ドアの向こうに消えたあの子を追いかけるべくフローリングの上をスリッパで音をたてながらついていくと、帝人君は玄関で靴を履いているところだった。どうやら出て行くつもりらしい。ふぅん、俺に対して何か言い返すようなことないのかと思いながらも、俺としてはさっきの一言で満足しているわけじゃない。俺を二股(って言えるよね、あのやり方は)の天秤にかけたんだからもうちょっと相手してもらわないとなぁと思いながらわざと足音をたてて近づき、ドアノブにかけていた帝人君の手を上から掴んだ。
「……っ!」
俺の手に息を飲んだのがわかる。放してください、と言わないのは俺が電話中だからだろう。気遣いのできるいい子なのにねぇ、と捕まれた右腕を解放しようと足掻く後ろ姿を見ながら思う。
片手は相変わらず電話を握ったままだから俺は片手で帝人君の動きを押さえちゃってることになるんだけど、腕一本で封じられる程度の腕力はどうかなのかな。
「ええ、ではその通りに。すぐにメールさせてもらいます」
失礼します、と慇懃なそぶりで電話を切ると目の前の細い肩が震える。
「さて」
通話を終えた携帯電話を操作しながら声をかけると、なんとか引きはがそうとしていた動きを帝人君はやめた。
「帰るの? それなら俺に挨拶くらいしてくれたらいいのに」
電話してるから気を遣った? と答えは分かり切っているのに尋ねてみたが帝人君は何も言わない。だからこちらから傷口に塩を練り込むように言葉を重ねる。
「ああ、もしかしてさっき俺が言ったことに怒った? でもさぁ、事実なんだからしょうがないよね」
視線は帝人君ではなく携帯に落としたままだ。それでもすがるようにこの子が空いている手で自分の鞄を握ったのが視界の端に映る。
さぁ、どんな言い分で俺を論破してくれるのかな。言うことがないんだったら俺の鬱憤が晴れるまでは相手してもらうことになるんだけど、と微笑を浮かべるが背中を向けている帝人君にわかるわけがない。
ぐっと俺が掴んでいるドアノブの上にある帝人君の手に力こもった。
「…………臨也さんと、一緒にしないでください」
「何が?」
うつむいたまま呟かれた声に問いかけるとさっきより少し大きな声で帝人君は応えた。
「僕は臨也さんとは違うんです」
「当たり前だろ。そん、」
「わかってないじゃないですか!」
そんなわかりきったこと言って何が言いたいの、という俺の声は帝人君に叫びにかき消された。この子が俺の言葉を遮るのは珍しい。
「僕は、あなた違って容姿がいいとか、そういうのじゃありません。そんなのわかってます。こ、こえ、だって、みっともない男の声、です。でも、だから」
途切れ途切れの声は震えていた。もしかして泣いているんだろうか。
面倒くさいと思うよりも先にその顔を見てみたいと思った。だってこの子が泣くのなんて見たことがないし、と思った俺の心中を読んだかのように帝人君は勢いよくこちらを振り返る。
そこにあったのは射殺さんばかりに俺を睨みつける青みがかった黒い瞳だ。憤りとか自己憐憫とかそういったものがない交ぜになっている複雑な目の色に思わず目を見開いたが、その後に続いた言葉には思わず眉をひそめてしまった。
「僕だって、あなたに気を遣って! 声だって出さないように、変なところを見せないようにしてるんじゃないですか!」
「……は?」
真剣に訴える声に対する返答としてはいささか間抜けだったかもしれない。だけどそれは俺にとって紛れもなく、は? としか言えない発想だった。
帝人君もしかしてあれは君なりに精一杯、痴態を演じないように我慢した結果なわけ? そもそも何でそんな考えしてるの、え、俺言った? 男の声とか嫌だって言った?
言った覚えないんだけどと考えこむ俺に帝人君は食ってかかるように言葉を続ける。
「それなのに、僕だって努力してるのに、それはもちろん、努力が全部報われるべきだなんて思いません。思いませんけど、いつも余裕綽々で、今まできれいな女の人ばっかり抱いてきた臨也さんにとってはやってるときの顔なんてみっともないとしか言えないってわかりますけど、それならなんで! 何で僕を抱いたんですか!」
「何でって」
そんなの、帝人君が好きだってあんな目でうったえてくるからだろ、とここで言えば帝人君憤死するかもしれないと思うくらいの冷静な思考はある。さっきまでこの子を追いつめて遊ぼうと思ってたのに、こんな逆ギレのされ方は正直ちょっと予想外だ。いやぁ、さすがだね帝人君。
男の僕としても楽しくないことなんてわかっていたことじゃないですかだとか言われても。だって俺は別にセックスについては男とするのも女とするのも別に隔たりがあるとは思わないし、気持ちよければいいんじゃないかと考えているところはある。でもこの子の求めてる答えはこれじゃないだろうなぁと思いながら、じゃあさ、と問いかけた。
「もうするのやめようか?」
「――……っ!」
その瞬間帝人君が浮かべた表情に思わず笑い出しそうになってしまった。すんでのところで耐えたけど。
勢いに任せてもうしません、と言えばいいのに、そうしたらこの子はこんな腹立ちを抱えて俺と一緒にいなくていいのに、こんなに怒っていても俺としないという選択肢を自分から選べないくらい、俺のことが好きらしい。
笑いをこらえたとは言え、真っ向から俺をにらんでいた帝人君には俺の浮かべた表情の意味がよくわかったらしい。言葉につまってしまった自分を恥じるように顔を俯けた。その顔をドアノブごと掴んでいた帝人君の手から放した手ですくい上げる。
「帝人君さぁ」
手を放しても帝人君はドアを開けようとしない。間近で見つめる俺の視線に対抗するようににらんできたのは数秒ですぐに戸惑うように視線が揺れる。この子曰く、俺の顔は整っているらしいので至近距離で見られることが恥ずかしいのかもしれない。
「……俺のこと、すごく好きだよね」
好意の感情を言葉にしたことは今まで一度もなかった。この子から口にしたことも、俺から誘導したことも。帝人君は性格上簡単に言う子じゃないし、俺だって今まで明確に感情を形にするなんて面倒だと避けていたのに。でももう、いいか。こんなに必死なんだったら少しくらいほだされてやろう。ついでに、日常と非日常での二股をやめさせてやらないとね。
そう思って言った言葉に帝人君は小さく口を開いた。肯定の言葉が出てくるだろうことはわかっていたけど、それでもどう言うかなと思っていた俺に彼は言葉よりも雄弁なものを見せてくれた。
音にするならぶわ、とかそういうのかな。帝人君の顔と首が一気に真っ赤になった。それはさっき園原杏里と映画を見に行ったと告げたときに染めた頬とは比べものにならないくらい朱色で、ぱくぱくと何を言えばいいんだと言わんばかりに上下する唇を見てると色と相まって酸素を求める金魚みたいだ。
もう限界だった。
「わ、笑わないでください!」
帝人君の顎から手を放し、爆笑している声もひそめ、肩口に顔を埋めて笑っているのを見えないようにしてやったのに叫ぶように文句を言われた。笑うなって言われても、ねぇ? 一体俺の何がこの子をこんなにしているのか聞きたいくらいだ。ていうか、聞いてみようか。
そう思って帝人君から身体を離して腕をつかみ、リビングに戻ろうとすると予想外の抵抗にあった。
「……嫌です。今日はもう、帰ります」
玄関のドアの前で未だ顔を真っ赤にさせて帝人君が恨みがましげに言うけど、ああ、ちょっとその顔かわいいかもしれないと思ってしまった。
「帰るの?」
「……帰ります」
「何で?」
「何でって……あ、あんなこと言われて一緒になんかいれませんっ」
あんなことって言うのはセックスの最中の顔がひどいっていうあれだろうか。よっぽどこの子にとってはショックな言葉になってしまったらしい。まあ、ショックを受けるような言葉を選んだけどさ。
「はいはい、わかったわかった」
あの顔の理由がわかった俺にとっては今後あんな態度をとらせない方法がわかっているんだから、もうどうでもいい。でも帝人君にとってはそうじゃないようなので笑顔を浮かべながら言ってやった。
「今日はしないでいいから。話だけでいいよ」
それなら帝人君はみっともないとこ見せることがないんだからゆっくりじっくり話そうじゃないか、と笑う俺に帝人君は毛を逆立てた子猫のように、絶対に嫌ですと叫んだので実力行使に出ることにした。
一端手を放して(放したときに一瞬だけ、え、って顔をしたのはもちろん見逃さなかった)真正面から抱きかかえるとぎゃあ、と色気のない声があがる。抵抗するかなと思ったが帝人君は硬直したみたいに動かなかった(動けなかったのかもね。そういえばこの子、こうやって抱きしめるといつも無抵抗になるっけ)。
リビングのドアを蹴って開けた途端思い出したように、臨也さん、靴! 靴! と帝人君が叫ぶ
「土足でフローリング歩かないでね?」
ソファに降ろしながらそう言うと即座に靴を脱ごうとしたのでその手を握って止める。
何ですか、と問いかけた帝人君は俺の顔を見てどういう意図かわかったらしい。そうそう、靴を履いたままだったらソファの上から動けない。
自分でもどうかと思うような甘ったるい声で、帝人君、と名前を呼ぶと俺から少しでも距離をとろうと身体をのけぞらせた。
それを見ながら自分でも今ものすごく嘘くさい笑みを浮かべているなぁと自覚しながら問いかける。
「さっきの答え、聞いてないんだけど」
「……さっきの?」
質問の意味がわからない、と首を傾げる帝人君に再度同じ質問を尋ねた。
「俺のこと、すっごく、好きだよね?」
わざわざ強調して言ったのはわかっているだろうに、それに不満を訴えることもできずに帝人君はフローリングに足がつかないよう浮かせたまま蛇ににらまれた蛙みたいになっている。
どう見ても相手の反応を楽しんでるようにしか見えないであろう笑みを浮かべている俺になんとか一矢報いたいとでも考えているのか、無言でじっと睨んでくるけどそんなの意味がない。
昔から惚れた方が負けっていうんだよ、帝人君、と言ってやろうかなぁと思いながらことさら笑みを深めてやった。
終わり