Please treat well softly 02







 首筋にふれると大げさなくらい身体を奮わせ、肩をすくめた。あまり物慣れない様子と、自分から抱いてくれと言うそのギャップがおもしろいなと思いながら耳をくすぐる。
「ん……」
 鼻にかかったような声をあげながらも帝人君は俺が与える刺激にぎゅ、とシーツを掴むだけで耐えた。
「くすぐったい?」
「少し……」
 くすぐったいってことはそこが性感帯になるんだけど、と心中で呟きながら手をゆっくりと下へ滑らせていく。鎖骨の骨をたどるように指を這わせ、肩の内出血をしているあたりで少し力をこめると息を飲むのがわかった。
「痛い?」
「……いえ」
 一瞬止まった息をそっと吐き出しながら帝人君は首を左右に振った。見た目ほどは痛くないのかもしれないけど、だから言ってあまり触られたい場所でもないのだろう。それがわかっている上で繰り返しそこを撫でた。
 ぎゅ、と唇を痛みをともないそうな力で噛んだのを目にしてそこから手を離す。恥ずかしさからか俺の方を見ようともしない目は潤んでいるがそれが痛みによるものなのか、まったく別の感覚からなのかはわからない。それを引きずり出すのも楽しそうだと思うが今は大人しくこの子の身体を暴くことにしよう。何せ今は俺はこの子に買われている身だ。弄ぶのは今日が終わってからでも遅くない。
 唇が乾いてるような気がしてなんとなく舌で潤してから、ささやかに自己主張している色素の薄い胸の突起に触れた。
「ん……っ」
 寒さか緊張からか立ち上がっているそこを人差し指と親指でつまむと、シーツを掴んでいる指に力がこもったのがわかる。
 男の場合ここが感じる子と感じない子がいるけど帝人君は前者らしい。開発してあげることで感じない子がそこで快感を得ることもあるらしいし、それなら元々敏感なタイプならそこを重点的に責めてやるとどんな反応を返すのだろうかと興味がわく。  
好奇心の赴くままふにふにと指でつまんだり、先端に爪をたてて緩い力で何度か引っ掻いてやると帝人君の呼気がどんどん荒くなっていった。
「は……う、んっ……」
 肉の付かない薄い胸板を揉むように撫でると無防備にさらけ出された下半身の熱が緩く頭をもたげているのがわかる。それに気を良くしながらいじっているそこに顔を寄せ、ねっとりと舌を這わせた。
「あ、んっ……」
 視界の端に見える、ずっとシーツを掴んでいた手が持ち上がる。すがりついてくるかな、と思ったけどその手はすぐにまたシーツの上に戻ってしまった。
 乳首をなぶりながら様子をうかがうべく視線を上げるととろりととろけそうな目がそこにあった。ただ乳首を舐められているだけなのに帝人君は、は、はと荒い呼吸を繰り返し、俺と目が合うと恥じらうようにぎゅう、と瞼を閉じた。
 その初々しい仕草にこくりと無意識に喉が鳴る。たぶん抱けると思うが、あ、これ確実に抱けると意識が変わった。この年頃特有のプライドの高さを持つこの子がただ与えられる快感を享受するしか術がなく、ふるふると震えている姿はそそられるものがある。
 自分から俺の好きなように抱いてくれと言った手前嫌だとか、そういった拒絶はできないのだろうけど何の膨らみもない場所を弄ばれるのは男として気持ちのいいものじゃないのかもしれない。だけど抱かれたいって言ったんだから女の子みたいに扱われても文句は言えないよね。
 胸に這わせていた手に力を込めてベッドに押し倒し、空いたで身体の線を辿りながら口に含んだ突起に歯を立てた。
「ひ、あっ!」
 咄嗟に漏れ出た高い声に帝人君の右手が上がる。もしかして押しのけられるかな、と思った俺の予想に反して帝人君はその挙げた手で自分の口を塞いだ。
「何してるの?」
 舌でとろかすように乳首を舐めながら問いかけてみたけどくぐもった声しか聞こえない。
 おおかた甘ったるい声を出すのが恥ずかしいとか、そういうところだろう。わざとらしい声は萎えるし、かと言って全く声を出さないのも興を削ぐが、こんな風に必死で自分の声を耐えようとする姿は嬌態と表してやってもいいかなと思う。
 く、と喉の奥で笑ってから胸からゆっくりと筋肉を辿るように手を下半身へと滑らせる。薄い腹筋が覆う腹のあたりで一度手を止めてから、くすぐるように臍の穴に指を差し込むとびくりと身体が震えた。そこに舌を差し込んで舐ってやろうかなと思っていると、臨也さん、と震える声が名前を呼んだ。
「あ、の……そ、そういうのは、いい、ので」
 手で口元を覆ったまま、消えそうな声で帝人君は、その先を触ってくれとねだった。
 その言葉に小さく笑みを返し、請われるままに手を先へと滑らせる。
「ここ?」
「あ、んうっ、ん……っ」
 きゅ、と先走りを漏らす性器を握ると一瞬だけ高い声が聞こえて、それをふさぐように帝人君は自分の手で口を押さえ込んだ。声くらい出してもいいのに、と思うが当の本人が出したくないと言うのなら別に無理にさせることはない。
 性器から零れる体液を塗り込めるように擦ってやると細い腰を浮かせ、くぐもってはいるが気持ちの良さそうな声をあげた。ちょっとかわいそうなくらいに勃っているから一度出させてあげたほうがいいかもしれない。こんな些細な刺激だけで気持ちよくなれるなんて若いよねぇ、と呟いた俺の言葉は先端に爪をたてた瞬間射精した帝人君の耳に入ったかどうか怪しい。
「ん、ん……っ」
 搾り取るように根本から擦ってやりながら精液を吐き出させると、くたりと身体が弛緩した。
 俺の手や帝人君の腹に散った白い体液を身体にすり込ませるように撫でてから、さてこれからどうしようかと考えを巡らせる。
 抱いてくれ、と言ったのだからこれで終わりなわけがないだろうし、こちらとしても終わらせる気はないのだけど元々受け入れるようにできてはいない身体にはいろいろと準備をしてやらないといけない。
 風呂場にローションとか、そういったアメニティくらいはあるだろうかと見に行こうとした俺をどう思ったのか、帝人君の指が俺の腕を掴んだ。
「あ……の、これで終わり、には」
 浅い呼吸を繰り返しながらすがるように見つめてくる目に笑いかけてやり、掴んできた手を握る。
「大丈夫、ちゃんと最後までしてあげるよ」
 ちゅ、と音をたてて帝人君の指にキスをすると驚いたように指が震えた。
「そのためにはちゃんと準備しないと……ね?」
「あ…………」
 ちろりと舌で指を舐めあげながらそう言うと帝人君は自分の手を取り戻すように力をこめたので離してやった。目をそらすその顔はあまり明るくない室内でも赤くなっているのだとわかる。
「そう、です、ね……準備しないと」
 そうそう、そのために俺はアメニティで使えそうなものを物色してこないといけないんだよ。
 こんなお願いをされるとわかっていたらもっとそれ用のものを揃えてあげたんだけどね。まさかこんなことになるなんて予想もつかなかったんだからしょうがない。
 アメニティで使えそうなものがなかったらどこかに買いに行かないといけないかな。それはちょっと面倒だけど、ま、それくらいならしてやってもいいかと思えるくらいには帝人君の痴態は悪くなかった。